色んな立場を失ったからこそ、相手の立場にたてるようになったかもしれない

私は自分の事を転職ソムリエと冗談めかして言ってるけれど、思い起してみると本当に色々な会社があって、色々な立場を経験してきた。多分、どこぞの伝聞情報によるイメージトークなんかよりも遥かにリアルで遥かに具体的な情報も知ってる。

そして、この「当事者として様々な立場を経験する」というのは我ながら非常に貴重な経験だったと思う。色々知ってるから情報通だとかそういう意味ではなくて、これからの人生でもまだまだ多くの人ときっと出会うなかで(1回会うだけから死ぬまで友人であるような人まで含め)、色々な立場を経験していた方がきっと、色々な立場の人のことを(あまり)傷つけずに済むからだ。

世の中の大体の人は、「自分は絶対その立場にはならない」と思うことに対して断定的に批判的意見を述べる傾向が強い。「自分はフリーターになったことがない→フリーターやる人は何を考えてるのか理解出来ない」、「自分は勤続10年目社員→3年で仕事を辞める人の気が知れない」、「自分はトップ昇進トップ昇格組→1つの仕事もやり終えられない人は努力が足りないだけだ」、「結婚退職して兼業/専業主婦→仕事もいいけど、いつまでも独身で仕事だけって悲しい人生よね」…などなど。

自分が何かしらのハードルを乗り越えるなり、何らかの地位を手に入れるなりした後、絶対にそれとは反対の立場にならないことが100%自明になると、その立場になる自分というのが全く想像できなくなり、その立場の人の事も一切想像出来なくなる。自分は絶対に批判されず傷つかないことも保証されるので、高台から下界をちらりと見下ろすように、上から目線の浅はかな意見をぽろぽろこぼしてしまうのだ。相手の気持ちがわからないから、自分の意見がどれだけキツくて、人を傷つけてるか理解出来なくなる。

私は色々大変なこともあったけど、当事者として少し強気な立場からものすごく弱い立場まで、色々な立場を経験したおかげでリアルに当事者の心境を知れた。それまで他人事と思ってた色んな人の立場のことを想像するようになって、昔よりは丸くなったと思う。また、いつ自分がどんな立場になるかわからないと思うことで、特定の立場について断定的な意見をもつこともかなり減った(ゼロではないけど…)。

手に入れた立場のことを大切にしたい気持ちはわかるし、大切にすべきとも思うけど、だからってそれとは逆の立場を否定しなくてもいい。逆の立場を否定することで自分の立場を肯定しようとするのは、多くの人の人生を息苦しいものにしてしまうと思う。