Aの話。

友人としても付き合いのある同僚がいる。仮にAとする。

 

私とAの共通点はいくつかある。地方出身で、年代が近く、異業界からの転職組で、入社歴がほぼ同じ、そしてなんだかんだ今の会社が好き。

ただ、異なる点ももちろんある。Aは海外でMBAを取っているが、私はドメスティック人間。その違いはうちの会社では大きく、Aは入社時花形である部署の1つに配属された。私はといえば、主要事業部門ではあるものの、傍流の部署に配属(色々な事情も背景にはあったのだがここでは割愛)。

Aや他の同僚とともに配属先の話をした際、Aが「すごく理想的な流れで入社出来た、キャリア形成上非常に良いパスだと思ってる」…といった話をしていて、当時は、「ああ、この人は私とは違う、遠い存在の人なんだな…」と、羨ましいような、自分が不甲斐ないような、心理的な距離を感じながら話を聞いていたのだった。その後しばし疎遠になった。

しかし時を経て、その後また交流をするようになった際、ある変化が起きていた。MBAを携えて花形部署に入社したAとやや傍流の私。また1つ共通点が出来ていた。

 

「未来見えない問題」。

 

ヤバかった。率直に言って。

 

まぁ諸説あるが、私は色んな事が重なり、色々うまくいってなかった(ぼやかせてください…)。良いこともあったけれど、全般的にはキャリアにプラスになるかといわれれば微妙な状態だった。いや、正直に言おう。微妙というか、かなり暗雲漂う厳しい状況だった。そしてAはというと、MBAを携え希望部署に配属されながら、なんと、Aは部署で完全にアシスタント扱いされていた。人間関係もうまくいっていないようだった。そして、それらの状況を総合的に判断すると、Aも私も「この会社にこのままいても自分の未来は期待できないだろう」と予見できる状態になっていた。

 

ただここでAと私と1つ違った点は、私がその事実を実際に悟っていたのに対し、Aはそれを理解していなかったことだった。

 

悟っていた私は、実はアクションを起こし始めていて、レジュメを見直し、エージェントにもコンタクトし始めていた。ところがAは状況を理解していないが故、そういった行動はしていなかった。

 

なぜ私は自分の状況を理解し危機感をもって行動を始めていたのに、MBAまで取った野心的そうなAは何もしていなかったか?その違いは、単純に学歴や頭の良さではなく、「何かへの強い関心」の差だったと今は思う。

 

私はやりたいことがあって、その分野にステップを進めたかった。進め方は、これまでは(今も?)、本当に下手だったと思う。でも、色々うまくいかないなかでも、どうしても「これに携わりたい」という想いは捨てられなかったし、下手なりになんとか進んでいこうともがいていた。だから、自分の強い関心事項にこの会社にいては携われる可能性がかなり低いと断定出来る事態となって、これはダメだ、キャリア的に死ぬにはまだ早い、ということでアクションを起こしていた。

 

Aには、「何かへの強い関心」は、無いようにみえた。やりたいこともなければ、なりたいものも無いように感じられた。もちろん、私が第三者としてそう感じただけで本当はあるのかもしれない。ただ、Aはある時は●●がしてみたいと口走ることもあったが、それは次の月には▲▲になっていて、半年後には〇〇になっていた。やりたいことが変わるのも悪いことじゃない。でも、やってみてやりたいことが変わったわけでもなく、近しいことをプライベートでやってみるでもなく、それをやってる人から話を聞くこともあまりなく、多少の興味ですら本当に持っているのかわからなかった。

 

その後の私とAはというと。

 

私はいざ転職活動を本格的に始めるぞ…と思った直前、私がずっと希望していた部署に異動することが決まった。たまたまのローテーションではなく、社内の既定のプロセスを経てなので、有難いことに、自分はその部署に必要と思われて異動出来たようだ。Aとは違う部署だが、率直に言ってそこもまた中枢のかなり大事な部署なので、正直自分でも非常に驚いた。異動後、前部署での「いろいろ」なことに苦労したPTSDから(←ブラックジョークです…)、最初は揚げ足を取られないかビクついていたが、そんなことは一切なく、なんなら普通に評価された。というか、評価面談では「期待通り。むしろそれ以上」とすら言ってもらえた(リップサービスかもだけど)。実際給料もチョット上がった。ようやく真っ当な道を歩き始めた気がした。安心できるほどでもないので、これからは追い上げないとだけど。

Aは、アシスタント扱いを受けながら、特に異動希望を出すわけでもなく、転職活動をするわけでもなく、ずっと変わらないままでいる。いや、変わらなければとは思っているのかもしれない。アカデミアに触れたり、知見を広げるためのビジネスセミナーに行くなどはしてるようで、それは良いアクションだと思った。が、しかし、その後斜め上の方向にも足が向いたようで、占いや、山籠もりセミナー、なんちゃらスピリチュアルカウンセラーにも手を伸ばそうとしているらしく、ちょっと心配である…。同僚であると同時に友人だと思っているので、相談された折には(押しつけがましくないよう相談されたときにのみ言うようにしている)、異動を考えてはどうかとか、どこそこの部署はこんなことをしているが興味あるかどうかとか、Aがいなくなるのは寂しいがキャリアの為に転職も選択肢にいれてはどうかという話をしてる。もう何度も何度も何度も(何度も何度も何度も!)。

でもAは、なんちゃらスピリチュアルカウンセラーのページをスマホで開いて私に見せてくれはしても、異動や転職活動には向き合う様子は見られない。

 

今やAは、ジョブランク的にも私より下になってしまった。それを言うべきか言わざるか。かなり迷っている(それぐらい言わないともはや本気で永遠に気付かないのではないか?と思ってきた)。本当にAの将来を考えれば言った方が良いかもしれない。でも、それを理解してくれるか分からないし、ただの嫌味に聞こえては本末転倒。

 

共通の同僚兼友人Bと今度サシご飯するので、Bにも意見を聞いてみよう…。